演劇事始

演劇や映画や、みたものの話

2023年の演劇まとめ:感想とベスト3

2023年に観た演劇(計26本、その内配信が1本)のまとめと感想 年間ベスト3 1位:マチルダ 2位:アナスタシア 3位:SHINE SHOW!今年は、バンズ・ヴィジットやチェーザレも含め、ミュージカル豊作の年だった。 マチルダは原作のシニカルな視点を含めての舞台…

NTLiveアドベント・全レビュー/NTLive星取表

この記事は「ナショナル・シアター・ライブ(以下、NTLive)10周年企画アドベント」の25日目の記事です。アドベントカレンダー(記事一覧)は以下リンクからどうぞ。 adventar.org24日目の健太さんからリレーを受け取りました。 kentabookmark.hatenadiary.j…

安全な場所から傷を眺めるということ(「フランケンシュタイン」「橋からの眺め」「善き人」について)

この記事は「ナショナル・シアター・ライブ(NTLive)10周年企画アドベント」の18日目の記事です。アドベントカレンダー(記事一覧)は以下リンクからどうぞ。 素晴らしい体験の数々が読めます! adventar.org初めまして、Lilyと申します。 演劇や映画が好き…

映画ダンジョンズ&ドラゴンズはいいぞ

ぽっぽアドベント2023開催おめでとうございます! アドベントカレンダー(記事一覧)は以下のリンクからどうぞ。 adventar.org 16日目担当のLilyです! 今年のテーマは「NEW WORLD」ということで映画ダンジョンズ&ドラゴンズについて書きます。2023年で最も…

愛されなかった子の行く末――『リチャード三世』

最高だった…まさかほぼオールメールのバーレスクが観られるなんて…。(あらすじ) 言葉を巧みに操るグロスター公(佐々木蔵之介)が腹心のバッキンガム公(山中崇)らと組んで王位継承権のある者・自分が王座に就くのを邪魔する者をどんどん排除していき、王…

俺達はどこへだっていける――「チック」

行く道も帰る道も、自分で決めれば良い シアタートラムで観た「チック」が本当に素晴らしかったのでしみじみしている。 ドイツの児童文学が原作で、家は裕福だけど周りとうまく関われず親からネグレクトを受けているマイク(篠山輝信さん)とロシア系移民で…

今日はおうちに帰らない――『大人のけんかが終わるまで』

みんな、大変。 『大人のけんかが終わるまで』(2018.07.19 19:00~@シアタークリエ) 役者さんの細かい演技が見事で「演技が上手いなぁ……」という小学生みたいな感想をもって家路についたと同時に、翻訳劇を上演する時、元の戯曲にあったものをどこまで残…

電話は続くよどこまでも――『フリー・コミティッド』

人生の大事な場面は案外、地下室で決まっている 『フリー・コミティッド』(2018.07.16 14時~@DDD 青山クロスシアター) ※公演内容のネタバレを含みます (あらすじ) 俳優だがそれだけでは食べていけないため、NYの人気レストランで予約受付係をしてるサム…

爪を立て、生活にしがみつく――『しあわせの絵の具』

ちいさなお家で生きた人達「しあわせの絵の具」を観た。 サリー・ホーキンスとイーサン・ホークの静かな演技力のぶつけ合いが凄まじい映画。親戚の家に身を寄せ、肩身の狭い思いをしていたモード(サリー・ホーキンス)が、「家政婦募集」の貼り紙を見て、魚…

魂を自由にせよ――『豚小屋』

人を辞め、ひとへ戻る 2017年1月7日@新国立劇場(主演:北村有起哉・田畑智子) ネタバレを含みます 軍隊から脱走した男が妻に協力してもらい、家の豚小屋に数十年隠れ住む話。 全体を通して、人間から逃げ出した人が、人間の中に戻ろうとする話だと感じた。…

私たちはどうして演劇を観るのか

2016年、「ラディアント・ベイビー」「BENT」という非常に忘れがたい舞台を観た。その後考えたこと。どちらも、観てみて思ったのはどうして演劇を観に行くのかって、多分知ってるけれどなかなか覗き込めない他者の在り方であったり、そこにある綿で包まれてな…

恋とは災害である――『フェードル』

だって仕方ないじゃない、愛してしまったんだから ネタバレを含みます。 私は蜷川幸雄演出・藤原竜也主演の「ロミオとジュリエット」という舞台で初めて髙橋洋さんという俳優を知りました。 その時の役柄はロミオの友人・マキューシオで、丸いサングラスをか…

君の愛は僕には見えない――『アドルフに告ぐ』

『アドルフに告ぐ』(2015年6月10日 13:00~@KAAT 神奈川芸術劇場) ネタバレあります。 ・全体を通して 様々な人物を追う形式のお話であるため、場面は国や時間を越えてくるくると変わっていくし、原作の厚みもあり、情報量を台詞に込めていた印象。 ただ…